SETAGAYA21

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「リンカーン・フォーラム」  代表代行兼事務局長 内田 豊氏

time 2006/10/14

「リンカーン・フォーラム」  代表代行兼事務局長 内田 豊氏

平成18年10月11日(水) 午後7時〜9時 パレスホテルにて
「リンカーン・フォーラム」  代表代行兼事務局長 内田 豊 氏
リンカーン・フォーラムとは?

1996年に政治・環境・教育NGOの地球市民会議の公開討論会支援プロジェクトとしてスタート。2000年11月、地球市民会議から独立し、公開討論会支援専門NGOとして活動。 (リンカーン・フォーラムの活動内容)
・全国への公開討論会開催推進・普及・啓蒙
・公開討論会主催者に対する公平・中立な運営方法のアドバイス、勧告
・「公開討論会マニュアル」の作成、配布、販売   ・公開討論会関連情報の収集・分析・公開・出版
・公開討論会主催者にふさわしい人物の発掘、育成 等

古谷)リンカーン・フォーラムさんとは、私が東京青年会議所(以下、「東京JC」)の理事長のとき、かなり密に情報交換などをさせていただいて、公開討論会を進めてきました。
その後、私は、東京JC世田谷区委員会のOB、現役の有志と一緒にSETAGAYA21というNPO団体を作り、東京JC世田谷区委員会と一緒に公開討論会を進めているところです。昨年は、東京都議会議員選挙と衆議院議員選挙の公開討論会を、東京JC世田谷区委員会と共催で行いました。
リンカーン・フォーラムでは現在、どのような形で活動しているのでしょうか。

■リンカーン・フォーラムの活動について
内田)現在、全国に10カ所の支援支部があり、その支部を窓口として全国各地に公開討 論会の情報を提供するという形をとっています。ただ、東京には、現状、支援支部がありません。東京では、公開討論会を開催している団体として、大きく分けると3つのカテゴリーの団体があります。東京JC、東京JC以外の東京ブロック内のJC、そして、そのほかの学生・主婦を中心とする市民グループです。これらの団体については、リンカーン・フォーラムは直接タッチしているわけではありませんが、東京JC以外のJCや市民グループからは、公開討論会について支援してほしいという問い合わせなどもあり、支援することもあります。東京JCについては、ここ数年は独自の路線で公開討論会を行っているという感じですね。

■一問一答方式はもう古い?
古谷)そうですか。私が東京JC理事長のときには、内田さんに、東京JCで開催する公開討論会の情報を逐一お知らせし、協力体制を取って進めていたのですが・・・。
現在、東京JCで開催している公開討論会については、どのように思われますか。
内田)東京JCについては、毎年、担当者が変わっても、ノウハウが引き継がれているという点はとてもよいと思います。他の東京ブロック内のJCではなかなかノウハウの引き継ぎがなく、その都度、リンカーン・フォーラムが支援していかなければならないという状況です。しかし、一方で、ここ数年、東京JCとリンカーン・フォーラムとの相互の情報交流がなく、リンカーン・フォーラム側で、東京 JCが開催する公開討論会の日時を把握することができないというところがあります。また、リンカーン・フォーラム側から見て、問題であると思われる部分もいくつかあります。
ひとつは、討論が面白くないという点、もうひとつは、集客ができていないという点です。

古谷)討論が面白くないというのは、具体的にはどのようなことが考えられますか。

内田)東京JCのやり方は、いまだに一問一答から出ていないということです。公開討論会が始まった初期段階では、確かに一問一答方式で行っていましたが、これはすでに過去のものとなっています。現在は、もっと進化した形で討論が行われており、リンカーン・フォーラムのマニュアルも、常に改訂され続けています。マニュアルは、ホームページに公開していますので、是非、最新のものを参考にしていただければと思います。

■動員は口コミ、都心だから集客できないとあきらめていることが問題
古谷)動員については、どうでしょうか?

内田)都心の場合、確かに集客が悪くなる傾向にはあります。地方と比べてその点はある程度仕方がないことだと思っています。しかし、問題なのは、「都心だから集客できなくても仕方がない」とあきらめているところにあります。この点も、リンカーン・フォーラムのマニュアルを忠実に実践していただければ、かなりの成果があると思うのです。
例えば、チラシの配布ということでいえば、1万世帯以内の選挙区の場合には効果的だという結果が出ているのでお勧めしているのですが、1万世帯を越える場合には効果が上がらないので、駅前でのチラシ配布などは絶対にしてはいけないと指導しています。新聞の折り込みも同様です。
そういうことからすると、東京ではチラシ配布や新聞折り込みなどで集客することはできないわけですが、東京JCでは、安易にこの方法に頼るという傾向があります。これでは集客はできません。1万世帯を越える選挙区では、口コミ以外の集客方法はないといってよいのです。その他細かいテクニックについては、リンカーン・フォーラムのマニュアルを参照して欲しいのですが、例えば、メンバーが30人いるなら、ひとり10人ずつ友達なり家族なりを呼んでくれば、それで300人の集客ができるわけです。
また、公民館で趣味などの活動を行っているグループの方々は比較的、政治の問題などにも興味をもっていらっしゃるので、公民館の掲示板などを見て、そういった団体の活動日を調べ、活動日にちょっとおじゃまして公開討論会のPRをさせていただく、といったことも非常に効果的です。そういった動員は手間がかかるわけですが、手間を惜しんでいては動員はできないということです。

古谷)確かに、動員について私たちは、少し楽をしようと思っていたかも知れません。
私が東京JCで初めて公開討論会をしたときには、本当にどうやって動員をしていいのかわからず、必至にいろいろな人に声を掛けていたように思います。結果として、当日はあまり天候がよくなかったにも関わらず、後に開催した公開討論会よりも動員面では成功していたと思います。初心に戻るということが大切ですね。
ただ、東京JCの開催する公開討論会についていえば、立候補予定者の信頼はかなり高いようで、参加要請をすれば、必ず出席してくれるというところがあり、そこは私たちが活動を地道にしてきたことの表れではないかと思っています。

内田)そうですね。他の団体が主催する場合には、まず、立候補予定者に参加してもらうこと自体が難しいというのが、残念ながら現状です。その点、東京JCについては、選挙ごとに公開討論会を開催している団体というイメージがあり、立候補予定者の信頼を高めているのでしょう。参加要請をすればほぼ100%の参加率であることはとてもすばらしことだと思います。東京JCが一貫して公開討論会をやり続けているということについては、リンカー・フォーラムも、とても高く評価しています。

■公職選挙法の改正について
古谷)今後、公開討論会を開催していくにあたって、私たちとしては、公職選挙法(以下、「公選法」)の改正をどう考えるかという点と、公開討論会へのリピーターをどう増やしていくかという点が問題であると考えているのですが、それらの点については、どのようにお考えですか。

内田)まず、公選法との関係ですが、実をいうと、最近は、公選法の改正を行わなくて も、公開討論会がうまくできるようになってきており、公選法の改正を主張しなくてもいいほどだと思っているのです。例えば、公示・告示後でも合同個人演説会という形で公開討論会を行っておりますし、テレビ放映も可能です。ホームページで公開討論会の画像を流すことについては、以前は、告示・公示後は音声のみという制約があったのですが、現在は、告示・公示後にホームページの更新を行わないなど一定の条件があれば、画像を流すこともできると解釈され、運用されています。
マニュフェスト配布についても、公選法に抵触しない方法での配布は可能です。公選法の関係についても、リンカーン・フォーラムのホームページにQ&Aがあり、そこにほとんどのことが書いてありますので、是非、見て下さい。

■公開討論会のファンをつくる
古谷)リピーターの問題についてですが、私は選挙がないときでも日頃から、政治に興味を持ってもらえるようなことをしていくのが必要なのではないかと思っています。例えば、私たちの団体が中心になって、政治に関する勉強会を開催したり、メーリングリストなどで情報を提供したりするということなのですが。そういった活動をしていくことで公開討論会のファンをつくるということが重要なのではないかと。

内田)そうですね。確かに、日頃からシンポジウムなどを行い、公開討論会の意義を一般に広めることも重要だと思います。また、リピーターリストを作成しておくことも必要ですね。東京JCは選挙のたびに公開討論会を開催しているのですから、それを利用してリストをつくり引き継いでいくということは重要です。

■マニュフェストの活用の仕方
古谷)先ほど、マニュフェストの話がでましたが、マニュフェストを公開討論会の中で、どういった形で活用していけばよいのかについて、何かご意見はありますか。

内田)この点については、リンカーン・フォーラムとしても課題のひとつです。
2003年に初めてマニュフェストができ、2004年の参院選では、マニュフェストの検証ができる機会だったので、積極的にこれを公開討論会に活用しようと考えていました。しかし、あの時点では、立候補予定者自身がマニュフェストに慣れておらず、公開討論会でこれを扱うことを嫌がったという事情があり、うまくいきませんでした。
ただ、次の参院選(来年)では、ある程度、マニュフェストを活用した公開討論会ができるのではないかと考えています。というのも、今年、小泉政権から安倍政権へと変わり、政権が交代したことで前の政権と後の政権とで矛盾する部分があれば、突っ込めるからです。マニュフェストは政党ごとの公約であるはずなので、首相が交替しても政権与党が同じであれば、前のマニュフェストが生きているはずです。従って、内容の変更や矛盾があれば、その理由を説明する義務があるからです。
また、首長選や地方議会選挙の場合、マニュフェストを作らない、もしくは作れないということも多いかと思います。この場合、公開討論会用に、立候補予定者に自分の政策を書いたパンフレットを作ってもらうということもしています。
厳密な意味でのマニュフェストよりは広い概念ということになりますが、これもマニュフェストと言っていいだろうと思います。ただし、このパンフレットについては、公選法に抵触しないよう注意する必要があります。リンカーン・フォーラムでは、選挙名と投票依頼の文言を記載しないよう、立候補予定者に徹底しています。
さらに、そのようなパンフレットも作れない立候補予定者については、公開討論会の中で言質を取るということをします。立候補予定者が主張する政策について、いつまでに、どういう手段で実現すべきなのかを、コーディネーターの誘導により言わせるわけです。こういう発言も、広い意味ではマニュフェストだと考えられます。ただし、「当選したらこうする。」という言い方になると、公選法上の「公約」となってしまうので、「〜すべきだ」という言い方にしてもらうよう気をつけているのです。このあたりの誘導はコーディネーターの腕の見せ所です。

■公開討論会コーディネーターの養成
古谷)コーディネーターの話がでましたが、私も、昨年から何度かコーディネーターを務めさせていただき、コーディネーターを養成することの必要性を感じています。東京JCでもコーディネーター養成講座などを開いているようなのですが、その講座を受講していない私のコーディネーターの方がいいなどというお褒めの言葉をいただいたりして、養成講座の難しさも感じています。

内田)コーディネーターの養成はとても重要で、リンカーン・フォーラムでも養成講座を行っています。たまに、私にコーディネーターをしてほしいという依頼があるのですが、私自身は、特別の事情のないかぎり、コーディネーターの仕事をお受けすることを断っています。私がコーディネーターを自らやるのではなく、各地にコーディネーターのできる人材を育てることの方が重要だと考えています。養成講座で重要なのは、一方的な講義で終わるのではなく、ロールプレイをすることです。実際の公開討論会での立候補予定者の発言を聞かせて、この発言のあと、どういうふうにコメントし、どういう質問をすべきかを講座の参加者に考えてもらうということもやっています。一方的に講義を聞くのではなく、自分の頭で一生懸命考えるということがコーディネーターの養成には必要なのです。

古谷) 本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。私たちは選挙のたびごとに公開討論会を開催してきたという自負があったのですが、本日のお話を伺って、惰性でやっていた部分もあったのではないかと反省しています。公開討論会はより多くの方々に来ていただかなければやっている意味がないということを肝に銘じ、初心に返って、これからも公開討論会を開催していきたいと思います。
ありがとうございました。

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